前記事(命題論理 Part1~3)では主に高校数学で学ぶ範囲の内容を紹介したが、この記事ではより発展的な内容(大学の数学で学ぶ範囲の内容)を紹介する。とは言え、今までと同様「数学」は一切使わない。
複数の「かつ」や「または」を含む命題
前記事(命題論理 Part1)で「かつ」と「または」の説明をしたが、「」や「」のように2つの要素を「かつ」や「または」で結んだものだけでなく、
のように複数(3個以上)の要素を「かつ」や「または」で結んだ命題を考えてみよう。
例えば、「」という命題が真である場合、これはもちろん、「 が真であり、かつ が真であり、かつ が真であり、かつ が真である」という意味なので、言い換えれば、
という意味になる。
一方、「」という命題が真である場合、これは「 が真であるか、または が真であるか、または が真であるか、または が真である」という意味なので、言い換えれば、
という意味になる。
ここで、前記事(命題論理 Part1)でも触れたが、「少なくとも1つ」というニュアンスには注意が必要である。つまり、
のみが真であり、 は偽である
のみが真であり、 は偽である
のみが真であり、 は偽である
のみが真であり、 は偽である
といったような、どれか1つだけが真になるパターンだけではなく、他にも、
が真であり、 は偽である
が真であり、 は偽である
すべてが真である
などといったパターンも含まれることに注意しよう。要するに、
ということである。
全称命題
前節の内容を踏まえてもらった上で、次のような命題 を考えよう。
上の命題において は日にちを表しているのだから、当然 は1以上31以下の整数である。 の右下に添え字で を付けて としている理由は、 の値が変化すると命題の内容も変化するからである。単に などと名付けてしまうと、 の値が変化した際に見た目上見分けがつかなくなってしまう。 と名付けることにより、例えば
という命題は と表せるし、
という命題は と表すことができる。
さて、上の命題 に対して、さらに次のような命題を考えることにする。
長ったらしくて驚かれたかも知れないが、これはつまり、1以上31以下のすべての に対して、 すべてを「かつ」で結んだ命題である。前節と同じ考え方をすれば、この命題は要するに
という意味になる。田所さんが31連勤のブラック労働になってしまうことについてはここでは目を瞑るとして、今考えたいのは上の命題を毎回毎回先ほどのように
などと書き表すのは正直「面倒くさい」という問題である。何より長ったらしくて非常に見にくい。というわけで、こういった「すべて~である」というニュアンスを含んだ命題については、次のように「書き換える」ことにしよう。
見た目としてはだいぶすっきりした形になった。上の命題における「」という記号は、日本語に訳すなら「すべての」と言い換えればよい。実際、「」という記号は「すべて」を表す英単語「All」の頭文字の「A」を上下反転させてできた記号である。 の前にある「 , 」(カンマ)は「~に対して」と言い換えてほしい。つまり、上の命題を日本語で言い換えると、
となる。さらに具体的に書き下すなら、
となる。先ほどの
と同じ意味になることが分かると思う。この例のように「すべての」という意味を表す記号「」を含んだ命題を全称命題という。
存在命題
前節と同じ命題 に対して、今度は次の命題を考えよう。
前節の例において「かつ」を「または」に変えたものである。1以上31以下のすべての に対して、 すべてを「または」で結んだ命題であり、こちらも前節と同じ考え方をすれば、この命題は要するに
という意味になる。「かつ」の場合とまったく同様で、今回も「書き表すのが面倒くさい」問題が生じてしまうため、簡潔に表すために次のように書き換えることにしよう。
上の命題における「」という記号は、日本語に訳すなら「ある~が少なくとも1つ存在して」と言い換えればよい。実際、「」という記号は「存在する」の意味を表す英単語「Exist」の頭文字の「E」を左右反転させてできた記号である。 の前にある「 , 」(カンマ)については今回は特に意味を持つものではないのでそのまま読み飛ばしてもらって構わない。以上を踏まえると、上の命題は日本語では
と言い換えられる。さらに具体的に書き下すなら、
となる。先ほどの
と同じ意味になることが分かると思う。この例のように「少なくとも1つ存在して」という意味を表す記号「」を含んだ命題を存在命題という。(次の記事へ続く)
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