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主に数学関係の記事を書きます

命題論理 Part4

前記事(命題論理 Part1~3)では主に高校数学で学ぶ範囲の内容を紹介したが、この記事ではより発展的な内容(大学の数学で学ぶ範囲の内容)を紹介する。とは言え、今までと同様「数学」は一切使わない。

複数の「かつ」や「または」を含む命題

前記事(命題論理 Part1)で「かつ」と「または」の説明をしたが、「 A \wedge B」や「 A \vee B」のように2つの要素を「かつ」や「または」で結んだものだけでなく、

 A \wedge B \wedge C \wedge D」や「 A \vee B \vee C \vee D

のように複数(3個以上)の要素を「かつ」や「または」で結んだ命題を考えてみよう。

例えば、「 A \wedge B \wedge C \wedge D」という命題が真である場合、これはもちろん、「 A が真であり、かつ  B が真であり、かつ  C が真であり、かつ  D が真である」という意味なので、言い換えれば、

「命題  A, B, C, Dすべて真である」

という意味になる。

一方、「 A \vee B \vee C \vee D」という命題が真である場合、これは「 A が真であるか、または  B が真であるか、または  C が真であるか、または  D が真である」という意味なので、言い換えれば、

「命題  A, B, C, D のうち少なくとも1つは真である」

という意味になる。

ここで、前記事(命題論理 Part1)でも触れたが、「少なくとも1つ」というニュアンスには注意が必要である。つまり、

  •  A のみが真であり、 B, C, D は偽である

  •  B のみが真であり、 A, C, D は偽である

  •  C のみが真であり、 A, B, D は偽である

  •  D のみが真であり、 A, B, C は偽である

といったような、どれか1つだけが真になるパターンだけではなく、他にも、

  •  A, B が真であり、 C, D は偽である

  •  A, B, C が真であり、 D は偽である

  •  A, B, C, D すべてが真である

などといったパターンも含まれることに注意しよう。要するに、

 A, B, C, D すべてが偽」というパターン以外はすべて含む

ということである。

全称命題

前節の内容を踏まえてもらった上で、次のような命題  A_n を考えよう。

 A_n:田所さんは12月  n 日は出勤予定である

上の命題において  n は日にちを表しているのだから、当然  n は1以上31以下の整数である。 A の右下に添え字で  n を付けて  A_n としている理由は、 n の値が変化すると命題の内容も変化するからである。単に  A などと名付けてしまうと、 n の値が変化した際に見た目上見分けがつかなくなってしまう。 A_n と名付けることにより、例えば

「田所さんは12月3日は出勤予定である」

という命題は  A_3 と表せるし、

「田所さんは12月24日は出勤予定である」

という命題は  A_{24} と表すことができる。

さて、上の命題  A_n に対して、さらに次のような命題を考えることにする。

 A_1 \wedge A_2 \wedge A_3 \wedge A_4 \wedge A_5 \wedge A_6 \wedge A_7 \wedge A_8 \wedge A_9 \wedge A_{10} \wedge A_{11} \wedge
 A_{12} \wedge A_{13} \wedge A_{14} \wedge A_{15} \wedge A_{16} \wedge A_{17} \wedge A_{18} \wedge A_{19} \wedge A_{20} \wedge A_{21} \wedge
 A_{22} \wedge A_{23} \wedge A_{24} \wedge A_{25} \wedge A_{26} \wedge A_{27} \wedge A_{28} \wedge A_{29} \wedge A_{30} \wedge A_{31}

長ったらしくて驚かれたかも知れないが、これはつまり、1以上31以下のすべての  n に対して、 A_n すべてを「かつ」で結んだ命題である。前節と同じ考え方をすれば、この命題は要するに

「田所さんは12月1日から12月31日まですべて出勤予定である」

という意味になる。田所さんが31連勤のブラック労働になってしまうことについてはここでは目を瞑るとして、今考えたいのは上の命題を毎回毎回先ほどのように

 A_1 \wedge A_2 \wedge A_3 \wedge A_4 \wedge A_5 \wedge A_6 \wedge A_7 \wedge A_8 \wedge A_9 \wedge A_{10} \wedge A_{11} \wedge
 A_{12} \wedge A_{13} \wedge A_{14} \wedge A_{15} \wedge A_{16} \wedge A_{17} \wedge A_{18} \wedge A_{19} \wedge A_{20} \wedge A_{21} \wedge
 A_{22} \wedge A_{23} \wedge A_{24} \wedge A_{25} \wedge A_{26} \wedge A_{27} \wedge A_{28} \wedge A_{29} \wedge A_{30} \wedge A_{31}

などと書き表すのは正直「面倒くさい」という問題である。何より長ったらしくて非常に見にくい。というわけで、こういった「すべて~である」というニュアンスを含んだ命題については、次のように「書き換える」ことにしよう。

 \forall n, A_n

見た目としてはだいぶすっきりした形になった。上の命題における「 \forall」という記号は、日本語に訳すなら「すべての」と言い換えればよい。実際、「 \forall」という記号は「すべて」を表す英単語「All」の頭文字の「A」を上下反転させてできた記号である。 A_n の前にある「 , 」(カンマ)は「~に対して」と言い換えてほしい。つまり、上の命題を日本語で言い換えると、

「すべての  n に対して  A_n は真である」

となる。さらに具体的に書き下すなら、

「すべての  n に対して田所さんは12月  n 日は出勤予定である」

となる。先ほどの

「田所さんは12月1日から12月31日まですべて出勤予定である」

と同じ意味になることが分かると思う。この例のように「すべての」という意味を表す記号「 \forall」を含んだ命題を全称命題という。

存在命題

前節と同じ命題  A_n に対して、今度は次の命題を考えよう。

 A_1 \vee A_2 \vee A_3 \vee A_4 \vee A_5 \vee A_6 \vee A_7 \vee A_8 \vee A_9 \vee A_{10} \vee A_{11} \vee
 A_{12} \vee A_{13} \vee A_{14} \vee A_{15} \vee A_{16} \vee A_{17} \vee A_{18} \vee A_{19} \vee A_{20} \vee A_{21} \vee
 A_{22} \vee A_{23} \vee A_{24} \vee A_{25} \vee A_{26} \vee A_{27} \vee A_{28} \vee A_{29} \vee A_{30} \vee A_{31}

前節の例において「かつ」を「または」に変えたものである。1以上31以下のすべての  n に対して、 A_n すべてを「または」で結んだ命題であり、こちらも前節と同じ考え方をすれば、この命題は要するに

「田所さんは12月1日から12月31日までのうち少なくとも1日は出勤予定である」

という意味になる。「かつ」の場合とまったく同様で、今回も「書き表すのが面倒くさい」問題が生じてしまうため、簡潔に表すために次のように書き換えることにしよう。

 \exists n, A_n

上の命題における「 \exists」という記号は、日本語に訳すなら「ある~が少なくとも1つ存在して」と言い換えればよい。実際、「 \exists」という記号は「存在する」の意味を表す英単語「Exist」の頭文字の「E」を左右反転させてできた記号である。 A_n の前にある「 , 」(カンマ)については今回は特に意味を持つものではないのでそのまま読み飛ばしてもらって構わない。以上を踏まえると、上の命題は日本語では

「ある  n が少なくとも1つ存在して  A_n は真である」

と言い換えられる。さらに具体的に書き下すなら、

「ある  n が少なくとも1つ存在して田所さんは12月  n 日は出勤予定である」

となる。先ほどの

「田所さんは12月1日から12月31日までのうち少なくとも1日は出勤予定である」

と同じ意味になることが分かると思う。この例のように「少なくとも1つ存在して」という意味を表す記号「 \exists」を含んだ命題を存在命題という。(次の記事へ続く)

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