TMathYBlog

主に数学関係の記事を書きます

ゼロから始める三角比 Part1

ゼロから始める三角比

 今回の記事では、「三角比」について、タイトル通り「ゼロから始めて」考えていくことにしよう。と言っても、三角比がまったく分からない人向けに教科書のように「サインとは何か」「コサインとは何か」を丁寧に教えていく内容  \cdots ではない。確かに本屋さんによくある参考書のようなタイトルだが、そんなありきたりな記事をここで書くつもりは無い。

 この記事で言う「ゼロから始める」とは、「三角比という概念が存在しない世界線を仮定し、文字通り【ゼロから】新たな概念や記号を独自に生み出し、それを用いて高校で出題されるような図形問題を解いていく」といった意味を含んでいる。したがって、ここからはサインやコサインは一旦忘れてもらって、「三角比が存在しない世界線」にワープしたと考えてほしい。

※先にネタバレをしてしまうと、最終的にはサインやコサインと似たような概念を結局生み出すことになるのだが、「ゼロから考えようとしてみる」という発想そのものが大切であると筆者は考えているのでこのような方針の記事にした。ちなみに「似ている」というだけで、登場する公式などは既存の三角比のそれとは微妙に異なる。そこも見所なので是非この先も読み進めていってほしい。

 さて、我々は今、三角比の概念が存在しない世界線にワープした。サインやコサインなどという言葉はこの世界には存在しない。この状況において、我々は次のような発想で様々な図形の性質を調べてみることを考える。

発想  \quad 個々の図形1つ1つを調べるとキリがないので、それぞれの図形を構成する「最小単位」はないだろうか?

 ちなみに、図形と一口に言ってもいろいろなジャンルがあるが、この記事で取り扱う図形は、とりあえずは「平面図形」を考えることにする。もっと言えば、「三角形」「四角形」「五角形」などのいわゆる「多角形」(曲線を用いず直線だけで構成された閉じた平面図形)のみを扱う。

 今、多角形を「人間の体」に例えてみよう。人間の体というのはもちろん千差万別、1人1人が別個体である。顔も違えば体格も異なる。この人類の個体を1つ1つ個別に調べ上げるのは非常に面倒であり非効率的である。そこで、人間の体を構成する最小単位である「細胞」に着目し、「細胞を調べれば人体のすべてが分かるのでは」という発想から「細胞学」という分野が誕生した。

 数学における図形(多角形)もこれと同じ考え方をする。つまり、1つ1つの多角形を調べ上げるのはさすがに骨が折れるので、多角形の世界でいう「細胞」のようなものは何かを考えるのである。

図形(多角形)における「細胞」とは何だろう

 手始めにまずは一番考えやすい「四角形」について考えてみることにしよう。

 図 \quad 1.1

上の図1.1のように、四角形ABCDにおいて点Aと点Dを結んだ対角線を引くと、四角形ABCDは三角形ABDと三角形ACDの2つに分解できる。点Bと点Cを結んだ対角線を引いてもやはり2つの三角形に分解できる。このことから、一般に四角形は2つの三角形に分解できることが分かる。

 では次に「五角形」について考えてみよう。

 図 \quad 1.2

上の図1.2のように、五角形ABCDEも、対角線の引き方にちがいはあっても適切に補助線を引くことによって3つの三角形に分解できることが分かる。

 もうひとつ、今度は「六角形」について考えてみよう。

 図 \quad 1.3

上の図1.3のように、やはり六角形でも同様に補助線を引くことによって4つの三角形に分解できることが分かる。

 以上のことをまとめると、

  • 四角形は「2個」の三角形に分解できる。

  • 五角形は「3個」の三角形に分解できる。

  • 六角形は「4個」の三角形に分解できる。

 \qquad \qquad \qquad \qquad \vdots

一般に、  n 角形は  n - 2 個の三角形に分解できる。このことから、図形(多角形)の「細胞」にあたる最小単位は「三角形」であると答えたくなるところだが、実はこれでは「半分正解、半分間違い」なのである。三角形は三角形でも、実はもうひと工夫することによってさらに細かく分解ができる。

 図 \quad 1.4

上の図1.4のように、三角形ABCにおいて点Aから辺BCに向かって垂線(辺BCと垂直になるような線)を引くと、「直角三角形ABD」と「直角三角形ACD」に分解できる。つまり、一般に「三角形」は2つの「直角三角形」に分解できることが分かる。

 したがって、以上の考察より最初の問いであった「図形(多角形)における『細胞』とは何か」の答えは「直角三角形」となる。どんな複雑な多角形でも、それらは所詮「直角三角形の集合体」でしかないのである。(次の記事へ続く)

インスタグラムもやってます。よかったらフォローよろしくお願いします。

https://instagram.com/tmathyblog?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA%3D%3D&utm_source=qr